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【株式譲渡】特定口座内で譲渡した上場株式等の取得費を5%概算取得費とすることはできないとした事例(令和元年分の所得税及び復興特別所得税の更正処分並びに過少申告加算税の賦課決定処分・棄却・令06-04-22公表裁決)

  • 執筆者の写真: FLAP 税理士法人
    FLAP 税理士法人
  • 4月17日
  • 読了時間: 3分

【事例のポイント】

特定口座内で保管・譲渡された上場株式等の取得費については、

👉 納税者が自ら概算で計算することは認められない

というものです。


つまり、取得費は金融機関が持っている特定口座の記録に基づき、金融商品取引業者等が一元的に計算することになっている、という立場を明確にしています。


【背景:特定口座制度とは?】

投資家の事務負担を減らすため、証券会社などが譲渡損益の計算や税額の計算を代行してくれる制度。


特定口座には「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の選択があり、今回は「源泉徴収あり」のケース。


【請求人の主張】

請求人は以下のように主張しました:


特定口座制度はあくまで「計算を代行してくれるもの」にすぎず、納税者が**取得費を自分で再計算する自由(概算も含む)**があるはず。


通達(措置法通達37の11の3-14)は、証券会社等のための規定であり、納税者が概算取得費を用いることまでは否定していない。


【裁判所・税務当局の判断】

→ どちらも退けられました。


理由は次の通り:


特定口座内の上場株式の取得費は、証券会社が管理する受入れ記録を基にして、一元的な方法で計算されることが制度設計上の前提。


通達も明確に、概算取得費の使用を認める他の通達(37の10、37の11共-13)を準用していない。

 これはつまり、特定口座分では概算取得費の使用は認めないという意思表示である。


(株式等の取得価額)

37の10・37の11共-13 株式等を譲渡した場合における事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費又は取得費に算入する金額は、所得税法第37条第1項《必要経費》、第38条第1項《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》、第48条《有価証券の譲渡原価等の計算及びその評価の方法》及び第61条《昭和27年12月31日以前に取得した資産の取得費等》の規定に基づいて計算した金額となるのであるが、譲渡をした同一銘柄の株式等について、当該株式等の譲渡による収入金額の100分の5に相当する金額を当該株式等の取得価額として事業所得の金額若しくは雑所得の金額を計算しているとき又は当該金額を譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費として計算しているときは、これを認めて差し支えないものとする。(平27課資3-4、課個2-19、課法10-5、課審7-13追加)


【結論】

したがって、


納税者は、源泉徴収選択口座に係る特定口座内の株式譲渡について、取得費を概算で申告することはできない。


ということが明確にされました。


✅補足:なぜ概算がNGなのか?

特定口座は「一元管理・簡便化」が目的。


概算を許すと、証券会社が出す「年間取引報告書」と齟齬が出る。


課税の公平性や制度の簡素化という観点から、例外を認めない形で運用されています。

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