親族間で土地を相続税評価額と同程度の価格で売買した場合に、低額譲渡(相続税法7条)に該当するかどうかの判例~平成19年8月23日判決
- FLAP 税理士法人
- 9月16日
- 読了時間: 2分

判示事項の整理
相続税法7条の趣旨・適用範囲
贈与又は遺贈によらず「著しく低い価額」での譲渡により経済的利益が移転する場合を捕捉する規定。
ただし、すべての低額譲渡を対象とするのではなく、一定の限界(著しく低い価額)に達した場合のみ。
「時価」の意義
原則として客観的交換価値。
相続税評価額は「時価の反映を目的とする評価額」であり、時価認定の基準の一つとされた。
「著しく低い価額」の判断基準
単なる「低い価額」と区別。
実質的に贈与と評価できるレベルに達することが必要。
相続税評価額 ≒ 公示価格の80% であることを前提とした課税庁の主張(租税回避可能性)
裁判所は「時価の80%で譲渡した場合、移転する利益は時価の20%にすぎず、換価性も考慮すればさらに小さい」として否定。
「実質的に贈与を受けたか否か」基準の排斥
7条は贈与意思の有無を問わず適用される。
この基準では「低額譲渡=常に贈与」となり、条文趣旨に反する。
「第三者間では成立し得ない価格」基準の排斥
文理に反する。
時価80%程度の価格は第三者間でも成立し得ないとは断言できない。
取引目的や合理性を基準とする課税庁主張の排斥
租税回避意図の有無を要件化することになり、7条の趣旨に反する。
相続税評価額と同程度以上の価格での売買
→ 7条不適用
評価額水準での譲渡は「著しく低い価額」に当たらない。
本件取引の合理性と租税回避性の有無
持分譲渡で換価困難、譲渡者の資金需要という合理的理由あり。
明らかな租税回避目的取引ではないと判断。
負担付贈与通達の正当性
相続税法7条・9条の解釈適用における補足的意義を肯定。
判例の意義
相続税評価額と同程度の価格での譲渡は「著しく低い価額」に当たらないことを明確化。
課税庁の「租税回避の可能性があるから課税」という論理を退け、条文上の「著しく低い」要件を厳格に解釈。
実務的には、相続税評価額を基準に親族間売買を行った場合、直ちに7条課税はできないことを確認した判例として重要視されています。
コメント