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【贈与税】相続税法7条の「著しく低い価額」とは?裁判所が相続税評価額と同程度以上の対価では「著しく低い価額」に該当しないとした事例 (採決H19年8月23日)

  • 執筆者の写真: FLAP 税理士法人
    FLAP 税理士法人
  • 3 日前
  • 読了時間: 3分

これは、相続税法第7条(著しく低い価額による譲渡を贈与・遺贈とみなす規定)の適用に関して課税庁の主張が争点となり、納税者側の主張が認められたケースの概要です。


🔍 判示事項の要約と解説

判示内容

解説(補足)

相続税法7条の趣旨と適用範囲

実質的な贈与があったとみなされる場合、当事者の意図に関係なく課税可能。

「時価」の意義

取引時点における客観的な市場価格を意味する。相続税評価額とは異なる。

「著しく低い価額」の判断基準

単なる安価では足りず、極端に低い(著しく)必要がある。

時価の80%での譲渡に対する課税庁の主張が排斥された

経済的利益の移転は限定的であり、著しく低い価額とは言えないとの判断。

実質的に贈与を受けたか否かによる基準は否定

相続税法7条の適用は贈与の意思を問わないため、課税庁の主張は妥当でない。

「第三者との間では成立し得ない価額」という基準も否定

第三者基準は不明確で、文理解釈上も7条の趣旨に反する。

取引意図や目的を基準とする主張も否定

同様に、主観的な意図を基準とすることは7条の客観的規定の趣旨に反する。

相続税評価額以上での譲渡は「著しく低い価額」ではない

相続税評価額は「著しく低い価額」とは評価されない価格帯と判断。

売買価格や背景事情から租税回避目的とは言えないと判断

換価困難・目的の合理性などから、通常の売買と認定

負担付贈与通達の正当性

本件には直接影響しないが、評価・通達の解釈も論点。


🧾 全体としての裁決(または判決)のポイント
  • 相続税法7条は「著しく低い価額」での譲渡のみを贈与とみなすものであり、単に市場より安い価格での譲渡は対象とならない


  • 税務当局が用いた判断基準(時価比率80%、第三者基準、意図の有無など)は、それぞれ条文の趣旨または文言に反するとして、ことごとく排斥された。


  • 評価の基準は「客観的な時価」に基づくべきで、相続税評価額との比較、換価性、譲渡目的の合理性なども考慮すれば、本件の売買は通常の取引であって租税回避目的とは言えない


📚 補足:相続税法第7条とは?

相続税法第7条は、以下のように規定されています。

「著しく低い価額により財産の譲渡を受けた場合には、その譲渡によって取得した財産は、贈与または遺贈により取得したものとみなす」


これは、「形式上は売買だが、実質は贈与」と言える場合に相続税や贈与税の課税逃れを防止するために適用される規定です。



まとめ

この判決により

  • 相続税評価額程度での親族間売買は原則として課税されない

  • 「著しく低い価額」の判断は相続税評価額が重要な基準

  • 当事者の意図・目的は考慮要素ではない

  • 経済的実質より法的形式を重視


この判決は、みなし贈与課税の適用範囲を適切に限定し、納税者の予測可能性を高めた重要な先例といえます。

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