【相続税】市街化調整区域内に所在する宅地について、「地積規模の大きな宅地」に準じて評価することはできないとした事例(令和2年8月相続開始)
- FLAP 税理士法人
- 4月17日
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主要ポイント整理
(1)相続税法第22条の「時価」と評価通達の位置付け
「時価」とは、相続開始時点の客観的な交換価値。
ただし個別評価では評価のバラつきや事務負担の問題があるため、評価通達による統一的な方法が合理的かつ前提とされる。
評価通達に沿った評価が適正な「時価」とされ、特別の事情がない限り通達に基づく画一的な評価が妥当。
(2)本件通達(地積規模の大きな宅地の評価)について
「地積規模の大きな宅地」の減価要因(①潰れ地、②インフラ整備費、③事業リスク)を考慮して評価減するもの。
適用対象の区域は、戸建住宅用地としての分割分譲が可能で、標準的な利用が見込まれる地域。
よって、市街化調整区域・工業専用地域・高容積率地域などは通達の趣旨にそぐわず除外。
適用可否の検討(12号区域に関して)
◎ 市街化調整区域における例外的適用:10号区域・11号区域
地区計画・集落地区計画(10号)または条例指定区域(11号)ならば、開発行為が可能であり、住宅地利用が標準的。
このため、これらの区域のみ通達の適用対象となる。
✖ 12号区域は対象外
12号区域は、条例で定めた開発行為に基づくもので、「分家住宅」「移転住宅」「社寺施設」等の特殊なケースを想定。
通常の戸建住宅地としての利用が標準的とは言えず、通達の対象からは除外されるのが妥当。
請求人の主張とその反論
12号区域でも宅地分譲は可能で減価も生じる→
可能性の有無ではなく、「標準的な利用」があるか否かが判断基準。
評価通達の定めによることが「著しく不適当」ともいえない。
自治体の区域指定により課税が不公平になる→
都市計画法に基づく合理的基準で区域が指定されており、自治体の裁量による恣意的な差別ではない。
画一的な適用こそが公平性を担保する。
特定集落区域において分譲の蓋然性が高い→
通達で明確に除外対象となっており、その理由にも合理性があるため、個別事情をもって準用は認められない。
結論
本件各土地は12号区域であり、10号・11号区域に該当しない。
評価通達5の適用もなく、評価方法が定められていない財産とはいえない。
よって、「地積規模の大きな宅地」に準じた評価を行うことはできない。
≪参考≫
評価通達5《評価方法の定めのない財産の評価》は、評価通達に評価方法の定めのない財産の価額は、この通達に定める評価方法に準じて評価する旨定めている。
評価通達6《この通達の定めにより難い場合の評価》は、評価通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する旨定めている。
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