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【相続税】特定事業用宅地等と特定居住用宅地等の区分誤りで更正の請求ができなかった事例 令和6年1月25日判決

  • 執筆者の写真: FLAP 税理士法人
    FLAP 税理士法人
  • 20 時間前
  • 読了時間: 3分
🔷【事件の概要】

被相続人:亡乙(平成30年10月死亡)


原告:相続人の一人。被相続人から宅地を相続。


宅地の内訳:


納屋敷地部分(特定事業用宅地等として申告)


倉庫敷地部分(特定居住用宅地等として誤って申告)


原告は当初申告と修正申告で、


納屋敷地部分 → 特定事業用宅地等(措置法69条の4第3項1号)


それ以外 → 特定居住用宅地等(同3項2号)と申告。


後に、


「倉庫敷地も特定事業用宅地等に該当する」と気づき、更正の請求をした


国税当局はこれを却下(居住用として申告したものを事業用に変更は不可)→ 本件訴訟。


🔷【法的争点】

▷ 争点1:当初申告・修正申告において、倉庫敷地部分は「特定事業用宅地等」として選択されていたか?

回答:いいえ


添付された明細書で、倉庫敷地は「特定居住用宅地等」と記載されていた。


よって、申告時点で特定事業用宅地等として選択されたとは認められない。


▷ 争点2:このような記載ミス・区分の誤りは「更正の請求」理由になるか?

回答:ならない


租税特別措置法69条の4第6項、施行令40条の2第5項1号により、


小規模宅地等の「区分」は納税者が申告時に選択し、明細書に明記する必要がある。


したがって、事後的に区分変更を目的とする更正の請求は認められない。


🔷【裁判所の判断】

倉庫敷地部分を「特定事業用宅地等」に含める申告はされていなかった。


区分変更は更正の請求で認められない(措置法の趣旨に反する)。


「誤記」ではなく、「選択の誤り」(意志の選択)であるため、国税通則法23条1項の「計算誤り」に該当しない。


もしこれを認めると、申告時点での選択制の意味が失われ、制度の潜脱になる。


🔷【結論】

原告の請求は棄却。

倉庫敷地部分は当初申告・修正申告で「特定事業用宅地等」とされていなかったため、小規模宅地特例の適用は認められない。


🔷【実務的示唆】

小規模宅地等の特例は「事後的な変更ができない制度」。


特例の区分選択は非常に重要で、申告時の明細書記載が決定的。


特定事業用宅地等・居住用宅地等の区分ミスは、「事実の誤認」ではなく、「選択の誤り」とされ、更正の請求は原則不可。


📌【留意点一覧表】

分類

留意点

解説・背景

申告書の記載

小規模宅地等の特例を受ける場合、「明細書の添付」かつ「区分の記載」が必要

租税特別措置法69条の4第6項、施行令40条の2第5項

区分の選択ミス

「居住用」と記載したが実は「事業用」に該当した場合でも、更正の請求による変更は不可

小規模宅地等の「区分」は納税者の選択に委ねられており、事後変更は許されない

更正の請求理由の限定

国税通則法23条1項の「計算誤り」には区分選択の誤りは含まれない

単なる誤記や数値計算ミスでない限り、認められない

実務対応

特例適用判断時は、宅地の利用実態確認+申告書上の区分記載の整合性確認を徹底

納屋・倉庫・自宅などの土地利用は複雑化しやすい

申告後の対応

区分の見直しが必要な場合は、更正の請求ではなく、原則は修正申告・異議申立てでの対応を検討

特例の適用は明確な意志表示が必要


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