【相続税】同族会社の貸付金債権の評価 回収可能性/相続開始後に解散・清算
- FLAP 税理士法人
- 4月17日
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事案の概要
被相続人の遺言により全財産を相続した原告が、相続税申告の際に、
被相続人がA株式会社(以下「本件法人」)に対して有していた
貸付金債権(額面:約6,036万円)について、
評価額を約1,405万円と申告。
しかし税務署(渋谷税務署長)は、
この評価額は過少であるとして、
更正処分および過少申告加算税賦課決定処分を行った。
争点:貸付金債権の評価方法
原告は、評価通達205(例外的な評価方法)に該当すると主張。
→「債権の回収が不可能または著しく困難である」として、減額評価を主張。
税務署(および裁判所)はこれに該当しないと判断。
◆ 評価通達205における「回収困難」基準とは?
通達205(1)~(3)と並ぶ例外事由であり、同程度に厳格な基準が求められる。
すなわち、債務者の経済的破綻が客観的に明白で、
回収不可能または著しく困難であることが確実に認められる場合に限られる。
財産評価基本通達205
205 前項の定めにより貸付金債権等の評価を行う場合において、その債権金額の全部又は一部が、課税時期において次に掲げる金額に該当するときその他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるときにおいては、それらの金額は元本の価額に算入しない。(平12課評2-4外・平28課評2-10外改正)
(1) 債務者について次に掲げる事実が発生している場合におけるその債務者に対して有する貸付金債権等の金額(その金額のうち、質権及び抵当権によって担保されている部分の金額を除く。)
イ 手形交換所(これに準ずる機関を含む。)において取引停止処分を受けたとき
ロ 会社更生法(平成14年法律第154号)の規定による更生手続開始の決定があったとき
ハ 民事再生法(平成11年法律第225号)の規定による再生手続開始の決定があったとき
ニ 会社法の規定による特別清算開始の命令があったとき
ホ 破産法(平成16年法律第75号)の規定による破産手続開始の決定があったとき
ヘ 業況不振のため又はその営む事業について重大な損失を受けたため、その事業を廃止し又は6か月以上休業しているとき
(2) 更生計画認可の決定、再生計画認可の決定、特別清算に係る協定の認可の決定又は法律の定める整理手続によらないいわゆる債権者集会の協議により、債権の切捨て、棚上げ、年賦償還等の決定があった場合において、これらの決定のあった日現在におけるその債務者に対して有する債権のうち、その決定により切り捨てられる部分の債権の金額及び次に掲げる金額
イ 弁済までの据置期間が決定後5年を超える場合におけるその債権の金額
ロ 年賦償還等の決定により割賦弁済されることとなった債権の金額のうち、課税時期後5年を経過した日後に弁済されることとなる部分の金額
(3) 当事者間の契約により債権の切捨て、棚上げ、年賦償還等が行われた場合において、それが金融機関のあっせんに基づくものであるなど真正に成立したものと認めるものであるときにおけるその債権の金額のうち(2)に掲げる金額に準ずる金額
裁判所の判断ポイント
本件法人の経済状況
債務超過状態が続いていたが、債務の大半は原告ら親族からの無利息・期限なし借入。
返済調整が容易であり、即時返済の必要性なし。
法人収支
賃貸収入があり、減価償却を除くと黒字期もあった。
法人は継続的に営業しており、一定の収益力があった。
解散は経営判断
解散・清算は損害回避ではなく、経営判断の結果と認定。
原告の主張(高齢・継続意思なし・長期返済見込み)
他者に管理委託すればよかった。
継続しない決定の証拠はなし。
長期返済になるからといって「破綻」とはいえない。
結論
本件債権は、評価通達205の「例外的評価事由」には該当しない。
よって、評価通達204に基づく「元本価額」である6,036万円で評価すべき。
原告の主張は採用されず、更正処分等は適法。
原告は「貸付金の回収が困難」として減額評価を主張したが、法人の破綻が明白とはいえず、債権は額面通りの評価が妥当とされた。
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