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【裁判事例】同族会社に対する貸付金等の回収可能性 被相続人の貸付金が回収できないとして5億円を2.5億円で相続税評価

  • 執筆者の写真: FLAP 税理士法人
    FLAP 税理士法人
  • 9月5日
  • 読了時間: 3分
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同族会社への貸付金の相続税評価に関する裁判の判示事項

この事例は、亡くなった人(被相続人)が自身の経営する同族会社に貸していたお金(貸付金債権)の、相続税を計算する上での評価額が争われた裁判の判決内容をまとめたものです。


1.事件の概要


  • 相続人の申告: 原告(相続人)は、被相続人が同族会社に貸していたお金(額面約5億円)について、「会社の経営状態が悪いため、全額は回収できない」と考え、その価値を約2.6億円と低く評価して相続税を申告しました。

  • 税務署の処分: これに対し西新井税務署長は、「貸付金は額面通りで評価すべきだ」として、評価額を額面の約5億円として計算し直し、不足分の税金を課す更正処分を行いました。

  • 訴訟の提起: 原告は、この税務署の処分は違法であるとして、その取り消しを求めて裁判を起こしました。


2.主な争点


被相続人が同族会社に貸していた貸付金は、会社の経営不振を理由に、相続税評価額を額面より低く評価できるか。 具体的には、財産評価の例外ルールである**「回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」**に該当するかどうかが争われました。


3.裁判所の判断(結論) ⚖️


原告の請求を棄却(相続人の敗訴)。税務署の処分は適法である。

貸付金は、原則通り額面(約5億円)で評価すべきであり、評価額の減額は認められないと判断しました。


4.判断の理由 📝


  1. 例外規定の解釈

    • 貸付金の評価額を減額できる「回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」とは、単に経営状況が悪いというだけでは足りません。

    • 破産などと同程度に、会社が経済的に破綻していることが客観的に見て明白であり、そのため貸付金の回収がほぼ見込めないと確実に言える状態でなければならない、と厳格に解釈しました。

  2. 会社の経営実態の評価

    • 裁判所は、相続開始時点の会社の状況を検討し、確かに債務超過で経営が悪化しつつあったことは認めました。

    • しかし、以下の点から**「客観的に明白に破綻していた」とは言えない**と判断しました。

      • 役員報酬を支払う余力はあった。

      • 貸主のほとんど(約94%)が被相続人やその親族であり、厳しい取り立てにあう状況ではなかった

      • 金融機関から新たに借入れをし、返済もできていた

  3. 結論

    • 以上のことから、この会社の状況は、貸付金の回収が著しく困難であると確実に認められるケースには当たらないと結論付けました。

    • したがって、評価額を減額できる例外規定は適用されず、原則通り額面で評価するのが妥当であるとしました。

判決年月日:令和6年3月26日

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