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【株式譲渡所得】令和2年度の所得税等に関し、上場株式等に係る譲渡損失及び配当所得等の金額を含めずに確定申告書を提出後、上場株式等に係る譲渡損失(7548万円余)及び配当所得等(2464万円余)の金額の申告漏れがあるとして更正請求書を提出したが、処分行政庁から、更正をすべき理由がないとの通知処分を受けた事例

  • 執筆者の写真: FLAP 税理士法人
    FLAP 税理士法人
  • 4月17日
  • 読了時間: 2分

【概要】

原告(弁護士)は、令和2年の確定申告で譲渡損失(約7,548万円)および配当所得(約2,464万円)を含めずに申告。


後から「申告漏れだった」として更正請求を行ったが、税務署(処分行政庁)から「更正すべき理由がない」と却下される。


原告はこれを不服として、その通知処分の取消しを求めて訴訟提起。


【争点】

原告が行った申告は、「確定申告不要制度を利用した申告」とみなされるか?


この申告に**「計算の誤り」または「法律に従っていないこと」**があったといえるか?


更正請求(国税通則法23条1項)の要件を満たすか?


【裁判所の判断と論理】

① 確定申告不要制度の位置づけ

特定口座で源泉徴収ありの場合、譲渡所得・配当所得は申告しなくても課税関係が完結。


ただし、納税者があえて確定申告を選択することも可能。


しかし、一度確定申告を行えば、その内容が確定し、「確定申告不要制度を利用した」とみなされる。


② 更正請求の可否(通則法23条1項)

通則法23条1項に基づく更正請求は、次のいずれかがあるときに可能:


「法律の規定に従っていなかったこと」


「計算に誤りがあったこと」


→ 今回の事案では、配当・譲渡損失を申告書に意図的に含めなかったのであって、

 「法律に違反したわけでも、計算ミスでもない」と評価されました。


➡ よって更正請求はできない。


③ 原告の主張と反論

原告:「損失を認識していなかったのに却下されたのは、事実調査がされておらず違法」


裁判所:「損失は株式売却時に認識可能だった。税務署に調査義務はない」


➡ 原告の主張は退けられ、通知処分に違法はないと判断。


【結論】

原告の確定申告は「確定申告不要制度を利用した申告」とみなされる。


それにより申告に含めなかった譲渡損失や配当所得は、後から更正請求で追加できない。


通則法23条1項の要件を満たさないため、更正請求は認められず、通知処分は適法。


【実務上の教訓】

特定口座(源泉徴収あり)で発生した損失や配当所得を他の所得と損益通算したい場合は、必ず最初の確定申告で明示的に含める必要がある。


一度「申告不要」とみなされたものは、後から「やっぱり申告したかった」は通らない。


大口の損失・配当がある場合は、申告の判断を間違えると、数千万円単位で控除の機会を失うリスクがある。

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