被相続人(亡甲)の所有土地に関する駐車場収益が誰に帰属するか(所得税法12条の実質所得者課税の原則の適用)~令和4年7月20日判決
- FLAP 税理士法人
- 9月16日
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更新日:9月17日

判示事項の整理
1 事案の概要
亡甲(被相続人)は、平成26年分の所得税更正の請求をしたが、却下された。
さらに、亡甲の子(長男乙・長女丙)が賃貸人となって第三者に駐車場を貸し、賃料を収受していた点について、処分庁は「収益は亡父甲に帰属する」として増額更正処分を行った。
紛争点は、駐車場収益が長男乙・長女丙に帰属するのか、亡父甲に帰属するのか。
2 関係契約と取引の構造
亡甲と乙・丙の間:使用貸借契約(土地使用貸借、アスファルト舗装等贈与契約)。
乙・丙と賃借人との間:賃貸借契約。
駐車場管理委託契約:委任者を乙・丙とする契約。→ 一連の取引(相続税対策目的)。
3 所得税法12条(実質所得者課税の原則)
「収益の法律上の帰属名義人」が単なる形式にすぎず、実質的には他人が収益を享受する場合には、享受者に課税する。
趣旨:形式よりも実質で収益帰属を判定する。
4 本件の契約関係の検討
土地所有者は亡甲。
平成26年2月以降、乙・丙が賃貸人となり賃料を収受。
根拠とされたのは「使用貸借契約に基づく使用借権」。
アスファルト舗装は土地に付合するため、乙・丙が独自に所有権を持つ余地はない。
しかし契約書からは、舗装部分を含めた土地を使用貸借させる意思があったと認められる。
よって使用貸借契約は「真正に成立」し、乙・丙は形式上「収益の法律上帰属するとみられる者」に当たる。
5 実質所得者の認定
本件各取引は、相続税対策を目的に、亡甲の所得を子に形式的に分散するもの。
乙・丙に与えられた「収益権」は、亡甲が自らの収益を無償で処分した結果にすぎない。
実質的に収益を支配していたのは亡甲。
よって乙・丙は「単なる名義人」にすぎず、収益は亡甲に帰属。
6 結論
亡甲が駐車場収益の実質的な享受者であるから、所得税法12条により、収益は亡甲に帰属。
処分庁の更正処分は適法。
第一審(納税者勝訴・認容)は取り消され、控訴審で課税庁の主張が認められた。
判例の意義
使用貸借契約や名義分散による収益移転は、実質的に被相続人が支配している限り、所得税法12条により否認されることを確認。
特に、駐車場収益の帰属に関する裁判例として実務上参考価値が高い。
相続税対策での名義分散スキームに対し、課税庁が「実質課税の原則」を適用して否認した事例。
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