共有物分割のメリットデメリット
- FLAP 税理士法人
- 5月8日
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1. 共有物分割とは(前提)
共有名義となっている不動産や動産について、共有者間で物理的に分割したり、一部の共有者が全体を取得して他の共有者に代償金(現金)を支払ったりすることを指します。
2. 税務上の基本的な考え方
【原則】共有物分割に贈与税・譲渡所得税は課されない
形式的に共有状態を解消するだけで、各共有者が法定持分に応じた財産を取得する限り、
贈与税は非課税(「無償の利益移転」に該当しない)
譲渡所得課税もなし(財産の移転ではあるが譲渡とみなされない)
【例外】持分割合と異なる分割を行った場合
課税リスクが生じるのは、以下のような場合:
ケース | 課税関係 |
ある共有者が法定持分以上の価値を取得 | その差額部分は他の共有者からの贈与とされる可能性(贈与税) |
代償分割において代償金の支払いがあった | 代償金を受け取った者が譲渡所得課税対象となる可能性 |
共有物分割が実質的に第三者への持分譲渡と同視される | 譲渡所得の課税対象(例:共有者の一人が他者の持分を買い取る) |
3.共有物分割のメリット
項目 | 内容 |
1. 利用・処分の自由確保 | 単独所有になることで、不動産の売却・活用・建築等が自由にできるようになります。 |
2. トラブル防止 | 利益相反・意思不一致による使用制限や相続トラブルを回避しやすくなります。 |
3. 課税回避が可能(条件付き) | 法定持分どおりの分割であれば、贈与税・譲渡所得税がかからないのが原則。税負担を抑えながら持分整理が可能です。 |
4. 相続対策として有効 | 分筆や現物分割、代償分割を活用することで、遺産分割の実効性が高まりやすいです。 |
5. 権利関係の明確化 | 不動産の登記名義を整理することで、将来的な管理・処分の負担が減ります。 |
4.共有物分割のデメリット
項目 | 内容 |
1. 評価差があると課税リスク | 法定持分と異なる分割(過大取得)をすると、贈与税課税のリスクがあります。 |
2. 代償金による譲渡所得課税 | 代償分割で金銭を受け取ると、譲渡所得として課税される可能性あり。 |
3. 実務コストが発生 | 測量・登記・司法書士報酬・不動産評価など、費用が高額になることもあります。 |
4. 意思統一が難しいことも | 共有者間で分割の方法に合意できないと、調停や訴訟になるケースも。 |
5. 分筆できない場合あり | 地形・面積・都市計画上の制限等により、現物分割が不可能な場合があります。 |
5. 参考判例・裁決事例
国税不服審判所では、共有物分割が形式的な「持分の整理」にとどまるか、実質的に「贈与・譲渡」に当たるかが争点となる例が多くあります。
例:平成23年9月30日裁決(裁決事例集 No.79)など
6. 実務上の注意点
分割協議書・登記内容と時価の整合性に注意
代償金の有無・金額の妥当性も課税判断に大きく影響
課税リスク回避のため、事前に税理士等と相談のうえスキーム設計を行うのが望ましい
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