【裁決事例】相続開始後にされた修繕工事代金相当額は、相続税の課税価格の計算における債務控除をすることができない(令和5年6月27日採決)
- FLAP 税理士法人
- 2024年7月10日
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基礎事実
本件は、請求人(納税者)が、
相続により取得した賃貸倉庫に係る修繕工事の請負代金相当額について相続税の課税価格の計算上控除すべき債務として申告したところ、
原処分庁が、当該修繕工事に係る債務は相続開始の際現に存する被相続人の債務で確実と認められるものに当たらないとして更正処分等をしたのに対し、
請求人が、当該修繕工事に係る債務はその存在と履行が確実と認められるとして、当該更正処分等の全部の取消しを求めた事案である。
納税者の主張
■生前に工事請負契約を締結していたため支払債務を負っていた
■修繕義務を負っていた
ことから請負代金相当額を債務控除できると主張
税務署の主張
■支払債務について
相続開始時点では工事未着工であり、そのため施工業者は代金を請求できない状態
請負契約はいつでも解除できる旨の記載があり、手付金、損害賠償金などなし
■修繕義務について
被相続人と賃借人との間で相続後に修繕工事を実施する旨の合意があったこと
修繕されていない状態でも使用できていた
以上のことから修繕義務が法律的に強制され、履行せざるを得ない状態ではなかったことから債務控除として認められない
審判所の判断
■法令解釈
相続税法第14条第1項は、その金額を控除すべき債務は、
確実と認められるものに限る旨規定しているところ、
同項にいう確実と認められる債務とは、
相続開始当時の現況に照らし、その履行が確実と認められるものをいうと解される。
■検討
請求人が本件相続開始日後に本件請負代金を支払っているからといって、
本件修繕工事の着工日(令和元年9月下旬)前である本件相続開始日(令和元年8月○日)時点で、請負代金の支払債務の履行を求められる状況になく、
その履行の要否すらも不確実な状況にあったことにより
その履行が確実と認められる債務には当たらない。
2. 賃借人が、本件被相続人に対し、
土間床の沈下を理由とする賃料の減額や本件修繕工事の履行を強く要請したような事情も見当たらない。
飽くまで本件被相続人ないし請求人による任意の履行が事実上期待されていたにすぎないものであったとみるのが相当であり、
本件賃貸倉庫に係る土間床の修繕義務は、本件相続開始日当時の現況に照らし、その履行が確実と認められる債務には当たらないというべき。
以上のことから相続税の課税価格の計算上、当該請負代金相当額を債務控除することはできないとした。
(参考)相続税法第13条第1項、第14条第1項
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