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【贈与税】             夫名義の預金口座から妻名義の証券口座にお金が入金されたことは、贈与には該当しないとした事例 裁決:令和3年7月12日

  • 執筆者の写真: FLAP 税理士法人
    FLAP 税理士法人
  • 2 日前
  • 読了時間: 2分

原処分庁は、夫名義の口座から妻名義の証券口座に入金があったことは、

相続税法第9条に規定する

【対価を支払わないで利益を受けた場合】に該当する旨主張する。

それに対し、贈与税課税要件を満たさないとされた事案


【法令解釈:相続税法第9条の趣旨と判定基準】

相続税法第9条は、形式上は贈与でなくとも、実質的に贈与と同様の経済的利益を無償または著しく低廉な対価で受けた場合に贈与税を課す規定である。


判定の際は、形式ではなく実質に着目し、「対価の支払がないこと」「贈与者の財産減少」「受贈者の財産増加」の実態を重視。


【認定事実】

以下のような事実が認定されています:


(ア)家計・財産管理状況

請求人(妻)は家計を管理し、夫の給与から小遣いを渡す立場。


家計の中心は夫Hの収入であり、妻の収入はパートによる月数万円程度。


自宅権利証等の重要財産も、妻の貸金庫で保管されていた。


証券・銀行口座の実際の運用や手続も、妻が主導していた。


(イ)金融取引・各口座の運用状況

請求人名義の証券口座や投資信託口座において、株式やファンドの購入・換金等を妻が自ら実施。


夫は金融機関担当者と面識はあるが、指示はしていない。


分配金等も妻名義の口座に振込・管理され、使途も主に家計費。


【判断】

① 財産の帰属についての一般的判断基準

財産の名義、出捐者、管理状況、費消状況、名義取得経緯などを総合考慮すべき。


特に夫婦間では、一方の財産を他方名義にすることも一般的であり、名義や管理状況のみで帰属を決定すべきではない。


② 本件における分析と結論

出捐者は夫H。


妻が主体的に管理・運用していたが、それは夫の包括的同意に基づく合理的な行動。


資金は家計維持目的で用いられ、私的費消も認められない。


したがって、請求人への「財産の帰属」=「贈与」は否定され、贈与税課税要件(相続税法9条)を満たさないと判断。


【結論(抜粋)】

「本件各入金によっても、夫Hの財産は、J請求人名義口座及びK請求人名義投資信託口座においてそのまま管理されていたものと評価するのが相当であり、本件○○○○円が請求人に帰属するものと解することはできない。」

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