【裁判事例】海外カジノ(バカラ)の収入すべき金額と計上時期 外れチップの必要経費性の要約
- FLAP 税理士法人
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海外カジノ(バカラ)の利益に関する税務裁判の判示事項
この文章は、海外のカジノ(米国、シンガポール、マカオ)で行ったバカラ賭博による所得の税務申告をめぐる裁判の判決内容をまとめたものです。
1.事件の概要
原告(プレイヤー)は、平成27年から30年にかけて海外のカジノでバカラを複数回行い、利益はなかったとして確定申告をしました。しかし、税務署長は「ゲームに勝つたびに得た配当が収入にあたる」として、所得を計算し直し、追加の税金を課す処分(更正処分等)を行いました。原告は、この処分は違法であるとして、その取り消しを求めて裁判を起こしました。
2.主な争点
カジノ(バカラ)の利益を、税法上の「一時所得」としてどのように計算するか。
収入はいつ発生したとみなすか?
経費として認められる支出(賭け金)の範囲はどこまでか?
3.裁判所の判断(結論)
個々のゲームごとに損益を計算し、勝ったゲームの利益のみを合算して所得を計算すべき。
具体的には、以下の通りです。
収入(総収入金額):ゲームに勝って得た配当(チップ)の合計額。
支出(収入を得るために支出した金額):上記収入を得た、勝ったゲームに賭けたチップの合計額。
経費として認められないもの:負けたゲームに賭けたチップの額。
4.判断の理由
収入が発生するタイミングについて
カジノのチップ(ライブチップ)は換金できるため、それを受け取った時点で経済的な価値が確定し、個々のゲームに勝った時点で収入が発生したとみなすのが妥当である。
原告が主張する「カジノでの一連のプログラムが全て終わった時点」で収入を計算するべき、という考え方は採用できない。なぜなら、バカラの各ゲームはそれぞれ独立しており、その都度、配当や没収が行われているからである。
経費(支出)の範囲について
所得税法(34条2項)のルール上、一時所得の計算では、収入を直接生み出す原因となった支出しか経費として認められない。
したがって、収入(配当)を生み出したのは「勝ったゲームの賭け金」だけであり、「負けたゲームの賭け金」は収入を一切生み出していないため、経費として収入から差し引くことはできない。
コミッション等の扱いについて
原告は、賭け金に応じて得られるコミッション(リベート)やホテルの無料宿泊といった利益も収入であり、そのために全ての賭け金が経費になると主張した。
しかし裁判所は、これらは賭け金に応じてもらえるインセンティブ(報奨)に過ぎず、賭け金はあくまで「配当を得るため」に支出されたものであり、これらのインセンティブを得るための直接の支出とはいえない、としてこの主張を退けた。
判決日:令和7年2月27日
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