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【裁判事例】外貨建取引による為替差益 外貨建ての取引(海外不動産の購入など)を行った際に生じる「為替差益」

  • 執筆者の写真: FLAP 税理士法人
    FLAP 税理士法人
  • 23 分前
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外貨建取引による為替差益の税務裁判に関する判示事項

個人が保有する外貨預金(ドル、ユーロ)を使って外貨建ての取引(海外不動産の購入など)を行った際に生じる「為替差益」の税金の計算方法に関する裁判の判決内容をまとめたものです。


1.事件の概要


原告(納税者)は、保有していた外貨預金(ドル)を使って、

米国の不動産をドル建てで購入しました。

この取引について、為替差益による所得はないとして確定申告をしました。


しかし、麻布税務署長は「ドルの価値が不動産購入時(預入時)より上がっており、為替差益が生じている。この利益は雑所得にあたる」として、追加の税金を課す処分(更正処分等)を行いました。


原告は、この処分は違法であるとして、その取り消しを求めて裁判を起こしました。


2.主な争点


  1. 課税対象か?:外貨預金を日本円に両替せず、外貨のまま不動産購入などに使った場合でも、為替差益は課税対象になるのか。

  2. 計算方法は?:課税対象となる場合、為替差益はどのように計算するのか。特に、レートが違う時期に何度も預け入れた外貨の取得価格(円換算額)をどう計算するかが問題となりました。


3.裁判所の判断(結論)


  1. 為替差益は「雑所得」として課税対象になる。

    • 外貨を外貨のまま使ったとしても、その外貨を取得した時と使った時との間に為替レートの変動による利益(円換算での価値の増加)があれば、その利益は実現したものとみなされ、課税対象となります。

  2. 為替差益の計算には「総平均法に準ずる方法」を用いるのが最も合理的である。

    • 異なるレートで複数回にわたって取得(預入)した外貨の取得価格は、それらをすべて平均して単価を算出し、それに基づいて計算します。個々の取引ごとに、どの時期に預け入れた外貨を使ったかを特定して計算する「個別法」は認められません。


4.判断の理由


  1. 為替差益は所得である

    • 為替差益は、個人の資産(担税力)を増やす経済的な利益であり、所得税の課税対象となる。

    • 所得税法は日本円を基準としているため、外貨の価値も円に換算して所得を計算するのが当然の前提である。

    • 外貨を日本円に両替しなくても、不動産の購入などで「使用した」時点で、その価値の増加分(利益)は確定・実現したものと扱われる。

  2. 計算方法として総平均法が合理的である理由

    • 外貨は、有価証券と同じように、いつ取得しても同じ通貨であれば価値は同じで、物理的に劣化しないという性質がある。

    • 有価証券の所得計算で、複数回にわたって取得したものの取得価格を平均して計算する「総平均法に準ずる方法」が採用されている。

    • この性質の類似性から、外貨の為替差益計算においても、この方法を適用するのが最も合理的であると判断された。

判決日:令和7年2月5日


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