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【税理士損害賠償請求】顧問先の横領につき、税理士が報告や是正・指導を行わなかったことに善管注意義務違反はないとされたが、所得拡大促進税制の失念につき、損害賠償請求の一部が認容された事例

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    FLAP 税理士法人
  • 2 日前
  • 読了時間: 3分

🌿 判示事項の要点まとめ

項目

内容

事案の概要

原告が被告(顧問税理士)に対し、①原告代表者による横領行為を看過したこと、②確定申告において税額控除(雇用者給与等支給額増加による税額控除)を適用しなかったことが善管注意義務違反であると主張し、損害賠償を請求した事案。


→横領部分(債務不履行1)については棄却、税額控除部分(債務不履行2)については一部認容。

原告の請求

- 横領部分:3,000万円の損害賠償請求


- 税額控除漏れ部分:1,038万4,048円の損害賠償請求

裁判所の判断①(横領部分・債務不履行1)

- 顧問契約の内容(会計帳簿の記帳代行や仕訳方法の指導等)から、会計書類の不審点調査や不正の是正・指導義務は認められない。


- 税理士法第1条・第41条の3や業務チェックリストの内容からも、調査義務や是正義務は認められない。


→ 横領部分の損害賠償請求は棄却。

裁判所の判断②(税額控除漏れ部分・債務不履行2)

- 確定申告において適用可能な税額控除(租税特別措置法42条の12の4)を見落としていたことは、善管注意義務違反にあたる。


- 損害額として、過大納付分616万9,600円、およびその検証のための税理士費用のうち30万円が認められる。


- 損害賠償金に課税された法人税・地方税は填補されるべき損害には含まれない。

結論

原告の請求のうち、債務不履行2に基づく646万9,600円およびこれに対する遅延損害金の限度で認容。他は棄却。

判決日

令和2年2月20日

コード番号

Z999-0181


🌿 この事案のポイント

1️⃣ 税理士の「横領行為の看過」に関する責任

  • 顧問契約の内容が会計書類の記帳代行や仕訳指導等に限定されており、不審点の調査や不正の是正・指導までは含まれない と判断。

  • 顧問税理士に、横領を積極的に発見・是正する義務までは課されない。


2️⃣ 税額控除の適用漏れに関する責任

  • 確定申告において適用可能な控除を見落とした場合は、善管注意義務違反が認められる。

  • 損害額は過大納付分+税理士費用の一部のみ。

  • 損害賠償金に課税された法人税・地方税は填補される損害に含まれない(損害賠償金は課税されても別の租税債務であり、相当因果関係がない)。


🌿 この判決の実務的意義
  • 顧問契約の範囲は重要! → 記帳代行や相談の範囲を超えた義務(不正の発見・是正等)は、契約内容や業務範囲が明確でない限り、原則として認められない。

  • 税務申告における控除適用は税理士の基本的義務! → 適用可能な制度を見落とすと、責任が問われる。

  • 損害賠償金課税問題 → 損害賠償金への課税は二次的な租税債務であり、賠償対象には含まれない(今後の議論の参考に!)。

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