【税理士損害賠償】税理士が相続税の物納制度について十分な説明を行わなかった。その結果、原告は物納できる株式を誤って低額で売却し、差額分の損害を被ったとして、債務不履行に基づく損害賠償を請求した事例
- FLAP 税理士法人
- 4 日前
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【判示事項まとめ】
(平成28年2月26日判決、コード番号Z999-0170)
1️⃣ 事案の概要原告が税理士法人(被告)に相続税申告手続を委任したところ、被告所属の税理士(E)が相続税の物納制度について十分な説明を行わなかった。
その結果、原告は物納できる株式を誤って低額で売却し、差額分の損害を被ったとして、債務不履行に基づく損害賠償を請求した。
2️⃣ 税理士の善管注意義務の範囲税理士には、
納税方法(延納・物納の可能性を含む)について委任者へ適切な確認と助言を行い、
納税義務者に最も有利な申告・納付手続を行う義務(善管注意義務)がある。
特に、相続税申告業務における物納の可否や物納手続の説明は専門家としての責務であり、税理士はこれを怠ってはならない。
3️⃣ 物納の制度と説明義務
相続税法41条による物納は、現金納付・延納が困難な場合に許可され、相続財産の中で物納順位に応じて特定資産(株式を含む)が物納可能となる。
税理士は、物納の可否、要件、メリット・デメリットを含め、適切な助言・説明を行う義務を負う。
Eが「原告から物納についての問い合わせがなかった」ことを理由に説明を怠った点は、善管注意義務に違反する。
4️⃣ 因果関係の認定
Eが物納について説明を尽くしていれば、原告は物納を選択でき、第三回の株式売却を回避できた可能性が高いと認められる。
よって、注意義務違反と原告の損害(株式の売却による損失)の間に因果関係が認められる。
5️⃣ 結論被告税理士法人は善管注意義務違反を理由とする損害賠償義務を負う。
この裁判例は、
✅ 相続税申告業務における税理士の専門的説明義務(特に物納制度の説明義務)
✅ 委任契約上の義務違反と損害賠償責任
についての重要な判断を示しています。
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