【相続税】無償返還届出書が提出されていない場合の土地の評価~法人税法上、賃貸借であると考えるのが妥当であり、無償返還届出書が提出されていないことから借地権が存在するものとして取り扱うのが相当であるとされた事例 裁決H9/2/17
- FLAP 税理士法人
- 5月12日
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無償返還届出書が提出されていない場合の土地の評価は課税上 どのように扱われるのでしょうか?

この裁決の中心的争点は「同族法人に借地権が認められるか否か」、すなわち土地の貸借が使用貸借か賃貸借か、または法人税法上の受贈益課税が想定されるかどうかという点にあります。
■ 判定構造(要点整理)
1.事実認定(イ)
同族会社で、被相続人が代表取締役かつ土地の所有者。
昭和33年に■■■が土地を借りて建物を建築。
相続開始時点でも建物を所有し、営業を継続。
権利金・地代の授受はなし。公租公課は■■■が全額負担。
貸借対照表に借地権の記載なし。
無償返還届出書は提出されていない。
2.法令・通達の整理(ロ〜ニ)
民法上の使用貸借と賃貸借の定義。
「法人税法上は、法人に対する無償の財産提供は益金算入対象」という原則(法人税法22条)。
法人税基本通達13-1-7により、「法人への無償貸付でも将来の無償返還が届け出られれば、権利金の認定課税はしない」との取扱い。
同族関係であることを踏まえた通達適用の趣旨(公平・重複課税の排除)。
3.判断(ホ)
(イ)貸借関係の実体:
私法上は使用貸借と見られる可能性もあるが、税法上は「法人には合理的経済人としての行動が期待される」ため、無償利用は本来課税されるべき。
借地権相当額が受贈益として発生していたと評価し得る(実際に課税されていなくても、理論上は課税対象)。
よって、土地評価時には借地権を控除して底地として評価すべき。
(ロ)遺産分割協議の効力:
使用貸借の有無は民事合意ではなく、税法上の実質判断による。
(ハ)借地法に基づく自然発生の主張への反論:
借地法の適用とは別に、税法上は法人税の取扱いで判断される。
(ニ)同族関係による賃貸借擬制の否定:
同族であっても、課税上の弊害が具体的に認められない限り、形式のみで賃貸借とみなすのは妥当でない。
(ホ)無償返還届出書の提出の有無と課税関係:
提出の有無は借地権の課税関係を画する絶対的要件ではないが、意思表示の確認手段としての合理性は認められる。
■ 総合評価
この裁決文の判断は、次のような理論構成に立っています:
法人に対する無償貸付は、法人税法上の益金算入の対象(通達13-1-7が前提)。
実際に受贈益として課税されていなくても、理論上発生していると評価し得るため、相続税評価では借地権相当額を控除すべき。
私法上の貸借分類(使用貸借 vs 賃貸借)に拘泥せず、税法独自の判断基準による。
■ 通達13-1-7の条文(要旨)
「法人が、その役員等から土地等の無償使用を受けた場合でも、当該土地等について**将来返還する旨の届出書(無償返還届出書)**を所轄税務署長に提出しているときは、その無償使用により借地権等の利益を享受しているとはみなさず、法人に対する贈与または受贈益としての課税は行わない。」
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