【相続税】小規模宅地等の特例 貸付事業用宅地 親族に定期借地権契約で貸し付けていた土地につき小規模宅地の特例が適用できないとした事例 裁決:H27年10月1日
- FLAP 税理士法人
- 5月1日
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この平成27年10月1日付の裁決は、
相続開始前に定期借地権付きで親族に貸し付けられていた宅地の特例適用可否が
争われた重要事例であり、
特に混同による借地権の消滅と事業承継の有無が判断の核心に据えられています。
以下、要点と法的意義を明確に整理します。
【事案の概要】
被相続人が長男Aに定期借地権を設定し宅地を貸付けていた。
相続開始後、Aが当該宅地(持分)を取得。
Aは、その宅地に対して小規模宅地等の特例(租税特別措置法69条の4第1項)の適用を主張。
税務署は一部の持分について特例不適用と判断し、更正すべき理由がない旨の通知処分および更正処分を行う。
請求人(A)はこれを不服として審査請求。
【主要論点】
1. 通知書の理由提示の適法性(行政手続法第8条)
請求人は「理由の提示が不備」と主張。
→ 裁決は、「処分の理由」欄に要件不該当とする根拠・事実関係が明示されており、理由提示義務に違反しないと判断。
2. 宅地の「貸付事業用宅地等」該当性
被相続人が相当の対価で宅地を継続的に貸付けていた
→ これは準事業にあたり、事業の用に供されていたと認定。
※ 借地人が生計一親族であっても、租特法上は排除されていないため、貸付けの相手方であること自体は問題なし。
3. 借地権の混同による消滅と事業承継
相続によりAが貸主(所有者)となったことで、借主としての地位と所有者としての地位が同一人に帰属し、民法520条により借地権は混同により消滅。
この結果、Aは貸付事業を承継したことにならない。
よって、特例要件(69条の4第3項4号イ)を満たさず、特例適用不可と判断。
【法的意義】
■ 小規模宅地等特例における「貸付事業の承継」の厳格解釈
宅地の貸付けが相続時に存在しても、承継されなければ特例は適用されない。
特に、借地権者がその土地を相続することで混同が生じた場合、自動的に事業は終了したとみなされるという点が重要
■ 「混同」による権利消滅の税務上の効力
民法上の混同(520条)の効果を、税務解釈にそのまま反映させており、形式的承継の有無ではなく、法的効果としての承継性の実態が問われている。
■ 「相続開始直前に事業に供されていたか」の意義付け
過去の貸付実績があっても、「相続直前」の状態で評価される。
被相続人が貸付けていた宅地であっても、承継されなければ特例適用対象外。
【実務への影響】
貸付先が親族である場合の取扱い:生計一親族であっても除外されないが、借地権設定のまま事業を承継させる工夫が必要。
混同を回避する方法:遺産分割により宅地の取得を第三者または法人とする、または借地権を維持したまま使用関係を継続させる工夫が考えられる。
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