【相続税】入居一時金の課税について~配偶者のために負担した介護付有料老人ホームの入居金は、生活費に充てるためにしたものに該当するから、相続税の課税価格に加算する必要はないとした事例 裁決:H22/11/19
- FLAP 税理士法人
- 5月12日
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この裁決要旨は、相続税法上の贈与税の課税対象および非課税財産の解釈に関する事案で、以下のような重要な論点と判断が示されています。
1. 事案の概要
被相続人が、その配偶者(要介護状態)を介護付有料老人ホームに入居させる際、入居金(定額償却部分を含む)を一括して支払った。
税務署(原処分庁)は、この支払分について、「定額償却部分」は未経過役務提供分に対応する返還債権があるとして、被相続人に配偶者に対する金銭債権がある(=債権評価による財産計上が必要)と主張。
これに対し、裁決は実質的には「贈与」にあたり、しかもそれは贈与税の非課税財産として認定されるべきと判断。
2. 裁決の判断ポイント
■ 贈与の認定
被相続人は配偶者に返済を求める意思がなかった。
配偶者には支払能力がなく、入居金は実質的に被相続人からの生活援助である。
よって、本件入居金支払時に贈与があったと認めるのが相当。
■ 非課税財産該当性
相続税法第21条の3第1項第2号により、「扶養義務者が生活費または教育費に充てるためにした贈与で、通常必要と認められるもの」は贈与税の非課税。
入居金は、高齢・要介護状態の配偶者の介護生活のために支出されたものであり、
自宅介護が困難だったこと
入居金支払は一時金で必要最小限だったこと
配偶者自身に支払能力がなかったことなどの事情から、「通常必要な生活費」として評価された。
■ 相続税への影響
たとえこの贈与が相続開始前3年以内であっても、上記の通り非課税贈与に該当するため、相続税法19条の「持ち戻し課税(みなし相続財産)」の適用対象とはならない。
3. 実務上の意義
この裁決は、次の点で実務的に重要です
扶養義務者が要介護配偶者のために支出した費用が、一定の要件の下で「贈与税の非課税財産」と認定され得る。
たとえ相続前3年以内の贈与であっても、生活費目的のもので通常必要性が認められれば、相続税への持ち戻し課税を免れる可能性がある。
老人ホームの入居金の定額償却部分でも、場合により返還請求権がない=債権計上しないと認定される可能性がある。
<国税不服審判所>
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