【相続税】亡父の相続税申告にあたって、相続開始前3年以内に父からの贈与として現金を申告→やっぱり!「実はこの現金は母の相続財産であり、贈与ではなく相続によって取得した財産である」と更正の請求を行う。→認められなかった事例
- FLAP 税理士法人
- 2 日前
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【事案の概要】
請求人は、亡父の相続税申告にあたって、相続開始前3年以内に父からの贈与として現金(本件現金)を申告。
その後、「実はこの現金は母の相続財産であり、贈与ではなく相続によって取得した財産である」と主張し、更正の請求を行う。
原処分庁はこれを認めず「更正をすべき理由がない」として通知処分。
請求人はその取消しを求めた。
【審判所の判断の構成】
① 更正の請求における立証責任の所在
通則法23条1項は納税者救済の規定であるが、納税者側に主張立証責任があると明確に述べている(本裁決第2項)。
⇒ 納税者は、申告の事実が**「真実に反する」**ことを裏付ける必要がある。
② 本件現金の取得原因の検討
請求人の主張:平成24年10月に母の相続財産として父から現金を受け取った。
審判所の検討:
遺産分割協議書(平成25年)や母の相続税申告書(平成27年)に本件現金の記載なし。
共同相続人(弟)も本件現金の存在を知らなかった。
⇒ 客観的資料や他の関係者の証言等に裏付けられず、請求人の供述は信用性に乏しい(第4項)。
③ 現金の原資の特定
母の口座から42,000,000円が引き出されていた(請求人の主張)。
しかし、父の口座からも77,635,824円が引き出されており、原資の特定は不明確(第5項)。
⇒ 現金の出所は「母」か「父」か断定できず、請求人の主張を裏付ける証拠にはならない。
④ 仮に母の財産が原資であっても…
仮に現金の原資が母の財産であっても、それを父が一旦取得し、贈与した可能性も否定できない(第6項)。
⇒ よって、「母の相続財産」と断定するには至らない。
【結論】
本件現金が被相続人(父)からの贈与であることを否定できず、請求人の主張は立証されていない。
⇒ 更正の請求は認められず、本件通知処分は適法と判断。
【法的意義・実務上の示唆】
❖ 更正の請求における主張立証責任
裁決文第2項が端的に示すように、「自己申告の誤りを主張する場合、納税者がそれを裏付ける証拠を示さなければならない」。
「原資が〇〇である」との主観的主張のみでは足りず、第三者的・客観的証拠が不可欠。
❖ 名義財産の帰属判断(相続か贈与か)
本件のように、形式と実質が異なる可能性がある場合には、次の観点が極めて重要:
資金の流れ(原資)の検討
他の相続人の認識
遺産分割協議・相続税申告の内容
いずれかに齟齬があれば、主張の説得力は著しく低下。
❖ 相続開始3年以内の贈与(相続税法19条の3)
贈与財産の帰属が否定されない限り、3年以内贈与として相続税課税の対象になる。
これに関する更正の請求を成功させるには、取得経緯・原資・第三者証言などの詳細な証明が不可欠。
【まとめ】
この裁決は、次の点で教訓的です:
更正の請求では、申告誤りを訂正する「納税者に立証責任」がある。
相続財産か贈与財産かの判別は、形式ではなく実質によるべきだが、客観的証拠が求められる。
単なる供述・推測では処分を覆せない。
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