【相続税】「生計を一にしていた」親族に該当しないとして、特定事業用の小規模宅地等の特例を適用することはできないとされた事例 裁決:平30年8月22日
- FLAP 税理士法人
- 5月1日
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この裁決は、小規模宅地等の特例(租税特別措置法第69条の4)における「生計を一にしていた親族」の解釈が中心的な争点とされました。
概要
1.事案の概要
被相続人の宅地について、相続人(請求人A)が小規模宅地等の特例を適用して申告。
しかし税務署(原処分庁)は、請求人Aは「生計を一にしていた親族」に該当しないとして、更正処分等を実施。
請求人らがその取消しを求めて審査請求。
2.法的争点:
「生計を一にしていた」の判断基準
裁決の論理構成と判断
■特例の趣旨
小規模宅地特例は、宅地を居住や事業用に使用していた相続人の生活基盤維持を保護する趣旨。
したがって、単に形式的な関係ではなく、実質的に生活を共にしていた者である必要。
■ 「生計を一にしていた」の定義
同一の生活単位、相互扶助、日常生活費の共通負担などが要件。
同居していない場合には、居住費・食費・光熱費等の主要な部分を共通にしていたことが必要。
■ 本件における事実認定
請求人Aは被相続人と同居しておらず、費用も被相続人自身の預金から支払。
生活費の共通負担が認められず、「生計を一にしていた」とは認められない。
■ 請求人の反論とその排斥
身の回りの世話や無償使用等を根拠に「助け合い」を主張。
しかし、特例の趣旨と要件(経済的共同性)を満たさないと裁決。
他の通達(通基通46-9等)は本件特例と趣旨が異なり、類推適用できないと判断。
■ 結論
特例の要件不充足につき、特例は適用不可。
法的意義
「生計一」要件の厳格解釈
特に非同居の相続人については、経済的に生活が密接であったことの客観的証拠が不可欠。
他通達との切り分け
「通基通46-9」や「法基通1-3-4」の「生計一」の概念は本件特例と異なる制度趣旨に基づくため、直接的に援用できないとした点が重要。
裁量排除と形式の排除
成年後見人としての関与や日常的な世話では、生活費の共通負担がなければ不十分との明確な判断。
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