【所得税】取引相場のない株式の時価の評価方法が、配当還元方式or類似業種比準方式のどちらで計算すべきか 裁決:R2/3/24
- FLAP 税理士法人
- 5月12日
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非上場株式を譲渡した際の株式評価における株主区分は譲渡前の議決権割合によるべきであるとして、配当還元方式を支持した高裁判決を破棄、差し戻された事例
以下、その要点と論点を整理します。

事件の概要(1・2)
納税者(被上告人ら)は、法人に対し株式を譲渡し、譲渡代金額をそのまま譲渡所得の収入金額とした。
これに対し課税庁は、当該代金額が「著しく低い価額の対価」(所得税法59条1項2号)に該当するとして、時価(適正な価額)をもって収入金額とすべきとして更正処分を行った。
問題は、「譲渡時の時価」をどう評価するか。
原審の判断
評価通達188の(2)~(4)は「株主が取得した株式」について規定。
よって、「譲渡した株主」の議決権割合ではなく、譲受人の議決権割合を基準にして、譲受人が「少数株主」に該当するなら、配当還元方式により時価を算定すべきと判断。
結果:1株75円という配当還元方式で算定した価額を時価と認定。
<国税庁 評価通達188>
最高裁の判断
原審の判断は「誤り」と断定。
その理由:
🔹 評価通達の性質
評価通達は「相続税・贈与税」のための財産評価基準。
これらの税制では、「株式を取得した者」の会社支配力に着目している。
🔹 所得税との違い
所得税法59条の趣旨:譲渡時の「譲渡人」にどれだけの利益があるかに着目する。
よって、譲渡人の支配力(同族株主か否か)を基準に評価方法を決めるべき。
🔹 所得税基本通達59-6の趣旨
少数株主該当性の判断においては、「譲渡人の議決権割合」で判断する旨を明記。
したがって、配当還元方式を使うか否かも譲渡人を基準にすべき。
<国税庁 通達59-6>
🔹 原審の誤り
原審は「譲受人が少数株主」であることに基づいて評価方法を選択。
これは評価通達の読み替えに誤りがある。
所得税法の適用を誤っており、違法である。
🔍 結論
この判決の重要なポイントは:
評価通達(相続税・贈与税)と、所得税における評価の基準は異なる。 所得税(特に譲渡所得)の評価においては、譲渡人が同族株主か否かに基づいて、原則的評価法(類似業種比準方式等)か、例外的評価法(配当還元方式)かを判断すべき。
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