【所得税】「居住者」該当性/生活の本拠は国内かシンガポールか令和5年4月12日判決
- FLAP 税理士法人
- 4月17日
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この事案は、国外転出後の個人が日本の「居住者」に該当するか否か(=課税対象となるか否か)が争点となったものです。
概要
原告甲は、日本の会社の代表取締役を務めていたが、平成25年に住民票をシンガポールへ転出届。
しかし、税務署は甲を平成25年~27年の間、所得税法上の「居住者」と認定して更正処分を実施。
原告側は「甲はシンガポールに住所を有しており、日本の『居住者』に該当しない」と主張し、処分取消を求めた訴訟。
法的争点
所得税法 第2条1項3号
「居住者」とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人。
「住所」=生活の本拠(生活の中心)。
判断は以下を総合的に考慮:
滞在日数・住居の実態
事業活動
配偶者・親族の所在
資産の所在等
本件における判断ポイント
■平成25年・26年(→「居住者」該当)
三田物件(日本の住居)は一部倉庫的だったが、
最低限の生活設備(ベッド、風呂など)があり、居住の実体あり。
滞在日数:
国内:141日/253日
シンガポール:56日/89日 → 国内滞在が圧倒的に多い。
職業活動も、主に国内で行われていた。
生計を共にする親族もなく、資産による影響も小。
よって、生活の本拠は日本(三田物件) →「居住者」に該当。
■平成27年(→「居住者」非該当)
滞在日数が拮抗:国内177日 vs シンガポール163日
国内では三田物件にほとんど滞在せず → 拠点性に欠ける
一方、シンガポール滞在中は一定の拠点性があり
ワイン事業にも115日(32%)従事 → 現地での職業活動も有意
総合的にみて、生活の本拠はシンガポール →「居住者」に該当しない
結論
平成25年 居住者に該当 国内滞在・職業活動が中心、住居実態もあり
平成26年 居住者に該当 同上
平成27年 居住者に非該当 滞在拠点がシンガポール中心に移行、職業活動も有
《重要ポイント》
住民票の転出=即非居住者とは限らない。
実態に基づいて「生活の本拠」がどこにあるかを判断。
いわゆるNomad(ノマド)”型の生活**や、拠点が複数ある場合は、滞在日数+拠点性+職業活動の中身が鍵となる。
特に、「住所」は形式的でなく客観的な生活実体が重要。
◆使える場面
高額所得者の海外移住に係る税務リスク評価
移住計画時の「居住者/非居住者」の実態判断指標
税務調査・更正処分に対する事前の対応資料
富裕層対応におけるクロスボーダー税務の判例紹介
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