(米国の遺族年金を受給する権利/「みなし相続財産」該当性・受給権の評価)
- FLAP 税理士法人
- 4月17日
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【概要と争点】
被相続人(請求人の父)の死亡に伴い、その配偶者(請求人の母)がアメリカの遺族年金(Social Security Survivor Benefits)を受け取る権利(=受給権)を取得。
税務署(原処分庁)は、この受給権を「みなし相続財産」として相続税の課税対象と判断。
請求人は、「相続によって取得したのではない」などと主張して、更正処分の取消しを求めた。
【審査判断のポイント】
1. 受給権の性質
米国遺族年金の受給権は、配偶者が米国法の規定により原始的に取得する権利であって、被相続人から承継する「相続財産」ではない。
しかし、相続税法第3条第1項第6号に規定された「定期金に関する権利で契約に基づかないもの」に該当し、「みなし相続財産」として課税対象になる。
つまり、「直接の相続財産」ではないが、法律上は「相続によって得たものとみなす」性質の財産(みなし相続財産)として課税対象となる。
2. 全額課税か?一部課税か?
請求人は、受給権のうち「相続後に増加した50%相当分だけが課税対象」と主張。
しかし、税務当局は「配偶者が原始的に全体を取得しており、その全額が相続税の課税対象になる」と判断。
遺族年金受給権の経済的実体は「一体として配偶者に原始的に与えられた新しい権利」と解され、半額免除等は認められない。
3. 評価方法(相続税法24条)
相続税法24条5項は、「契約に基づかない定期金」について、評価の準用規定を設けている。
したがって、「契約がない」場合でも、「給付を受けるべき金額の1年当たりの平均額」や「予定利率」に代わる合理的な代替指標を用いることが可能。
評価に用いた指標:
「1年当たりの平均額」=令和元年の実際の受給額(本件受給額)
「予定利率」=アメリカ社会保障制度の信託基金における実効利率(本件実効金利)
これらは、将来受け取る受給権を現在価値に割り引く際の適切な基準と判断された。
【結論】
米国遺族年金の受給権(本件受給権)は、**相続税法第3条第1項第6号の「みなし相続財産」に該当し、相続税の課税対象となる。
全額が対象であり、請求人の主張する50%課税は認められない。
評価方法としては、令和元年の受給額を年平均額とし、社会保障信託基金の実効利率で現在価値を算出するのが妥当。
🔖参考用語解説
用語 意味
相続税法第3条第1項第6号 相続等により「みなし取得」された財産に課税する規定。例えば、年金受給権など。
みなし相続財産 実際には相続で取得していないが、税法上は相続とみなして課税対象とされる財産。
相続税法第24条 定期金に関する権利の評価方法について定めた条文。
実効利率 投資の収益率(ここでは米国の社会保障基金の実績利率)。将来価値を現在価値に変換する際に用いる。
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