【所得税/贈与税】税理士が助言したが…親子間で使用貸借契約された土地に係る駐車場収益の帰属について 裁決:令和5年6月13日
- FLAP 税理士法人
- 2 日前
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この裁決要旨は、相続税法および所得税法の実質所得者課税の原則が贈与税の課税にどのように関係するかについて論じた興味深い事例です。以下に、この裁決のポイントを整理しながら、重要な論点を解説します。

【事案の概要】
争点:被相続人(父)が所有する土地を子(審査請求人)に使用貸借させ、子がその土地を駐車場として賃貸し収益を得ていたことについて、この収益は誰に帰属するのか。
原処分庁の主張:収益は形式上は子に帰属しているが、実質的には被相続人に帰属するものであり、子が無償で利益を得たため贈与税の課税対象である。
請求人の主張:収益は自分のものとして得ていたものであり、贈与には当たらない。
【法的論点と裁決の判断】
1. 実質所得者課税の原則(所得税法第12条)
所得税法では、「名義が誰か」ではなく、実際に収益を享受している者が誰かを重視します。
この原則により、単に名義を請求人にしていたとしても、実際に収益を得ていたのが被相続人であれば、その収益は被相続人に帰属する。
2. 使用貸借契約の性質と収益の帰属
使用貸借契約に基づき土地を借り受けた請求人が、その土地を第三者に転貸して収益を得るには、転貸および果実収取の承諾が必要。
ただし、使用貸借契約の無償性からして、貸主(被相続人)はこの承諾を将来的に撤回できる性質を持つ。
3. 贈与税の課税要件(相続税法第9条)
子が実際には対価を支払わずに収益を得ていたことから、相続税法9条に該当し、贈与税の課税対象と判断。
本件税理士法人に対する相談
請求人は、本件被相続人から、本件被相続人の資産の管理や相続に関心を持っている旨の話を聞くようになったことから、
本件被相続人の意向を受けて、本件税理士に対し、本件被相続人が所有する不動産に関する租税や相続税の節税対策について相談をした。
本件税理士は、請求人からの上記相談に対し、本件被相続人の財産が今後増加すると、請求人が本件被相続人の財産を相続する際、相続税を納付するために本件被相続人所有の土地の一部を売却しなければならないかもしれないとして、請求人が本件各土地を借りて駐車場の管理・経営をし、その収入を得ることを助言した。
請求人は、本件被相続人に対し、上記の本件税理士からの助言の内容を伝え、請求人が本件被相続人から本件各土地を借り、駐車場の管理・経営することを提案したところ、本件被相続人は、十分検討した上で、その提案を了承した。
請求人は、本件被相続人の了承を得たことから、本件税理士に対し、上記の助言に沿って手続を進めることを伝え、本件税理士は、必要となる各種の契約書を作成するためのひな型を用意し、請求人に交付した。
被相続人が他の財産についても同様に無償で便宜を図っていたこと、駐車場の管理状況が変わっていなかったことなどから、税負担の軽減を意図した形式的な取引に過ぎないとされた。
【結論】
使用貸借契約書を締結していたとしても実質的な収益の享受者は被相続人であり、子は単なる名義人にすぎない。
よって、収益を子が受け取っていたことは贈与に該当し、原処分庁の贈与税更正処分は妥当と判断された。
【参考ポイント】
この裁決は、形式的な所有・契約関係と実質的な収益の享受者との違いを丁寧に検討した好例です。
資産を使った節税策を講じる際にも、「誰が実質的に利益を得ているか」が重要であることを改めて示しています。
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